日本の原子力政策を鋭く表現した演劇『アトミック・サバイバー』の再演が決定した。良くも悪くも日々変化を遂げる「エネルギー」事情。それこの作品における特徴だろう。 昨年の初演を観た人は、修正がされたところや加わったところを確認する等、新たな楽しみ方も出来るし、今回初めての人は、どのように発電はされているのか、視覚的に知るいい機会となることは確かだ。
8日、9日の2日間は、会場である川崎アートセンターで稽古を行った。
真剣かつ楽しそうに細部の動きまで確認し合う。
日本の原子力政策を鋭く表現した演劇『アトミック・サバイバー』の再演が決定した。しかも今回は全国ツアーだ。地域創造事業の選考を見事勝ち抜いたわけだが、こういった社会問題を真っ向から扱った作品が選び抜かれるということは、言うまでもなく異例のこと。
同作品は、昨年2月、東京国際芸術祭で上演された。以来約1年半の時が経過している。「エネルギー」事情は良くも悪くも日々変化を遂げてきた。この作品における特徴でもありが、「台本」という「台本」が存在せず、セリフはパンフレットや、取材を通し、当事者が吐いた言葉等を取り入れて組み立てていること、また、情勢に敏感であることからも、作品に修正が加えられることは必然だ。驚くことに、初演が終わった時から、セリフを担当しているドラマトゥルクの長島さんはずっと関連の出来事、記事、データ等を蓄積し、追っていたという。それらを元に、今回然るべき修正が図られた。セリフ担当であるからとはいえ、再演が決定していないにも関わらず、状況の変化を追い続けるというのは並大抵のことではない。「再演はしたいな、と思っていたから。」と比較的あっさり言うところも長島さんらしいが、培われた彼の知識全てを作品に全て注ぎ込むことは出来ない程であることはおのずと知れる。
9日の5時から6時の間は、地元サービスとして「公開稽古」とされ、地元の高校2校の演劇部員の生徒らが観に来た。
稽古を観終わり、演出家の阿部さんや役者たちと質疑等が行われている様子。
再演にあたり、初演と変わったのは6箇所程。
劇中に出て来る一般市民がPRセンターのコンパニオンのお姉さんに質問し、それにお姉さんが答える、いわゆるQ&Aのシーンが今回はご当地版にするという工夫が施された。例えば川崎市の劇場では、神奈川から来たというキャラクター出て来たり、神奈川県における原子力関連施設について、例えば、久里浜にある原発燃料製造会社(GNF−J)や、今月配備予定の原子力空母のことにも触れられる。また、柏崎の報告や、昨年7月に建設された幌延深地層研究センターのPRセンターに関して付け加えられ、言及されている。
変更があったのは、高レベル放射性廃棄物の最終処分場に挙げられていた東洋町が昨年2007年4月22日、沢山保太郎氏が新たな東洋町長となり、応募を取り下げ、白紙撤回されたこと。これを受け、初演時では「現在、東洋町様にご応募頂いています。」とされていたところが、その候補もなくなったと変えられている。また、初演当初は未だ試験工程に入っていなかったガラス固化製造もこの間に着手され、その結果、ガラス固化を作れる状態にないこと。また、濃縮工場の遠心分離機が、最大7つあるラインのうち初演時では5機が停止していたが、現在は内6機故障、停止しており、1つのラインだけが稼動しているということだ。
ガラス固化体に関しては、現在も大きな問題を抱え続けている。
アクティブ試験において昨年11月にガラス固化製造工程に着手されたものの、白金族が蓄積し、12月には運転停止、溜まった白金族の除去作業に約半年を要して今年2008年7月2日に再開されるも、直後に不具合が生じ、中断されるということが起こり、原因は「溶融ガラスの流下停止」という予想外の出来事であることは明らかであるものの、その原因追求がされないまま、スケジュールだけが優先的に考慮された、とにかく復旧作業を急ぐという事態となっており、現在も引き続き非常に注目されている。
昨年の初演を観た人は、そういった修正がされたところや加わったところを確認する等、新たな楽しみ方も出来るし、今回初めての人は、どのように発電はされているのか、視覚的に知るいい機会となることは確かだ。かと言って、当然知っているという市民や、専門家、知識人の方でも充分楽しめるため、入門編のようでそうでもない作品だからこそ誰でも楽しく観ることができるのが、この作品の魅力の一つだろう。
演出家の阿部さんは、今回再演にあたって、苦労したこと、気を遣ったことをこう話す。
「前回、初演の時は、知らない事も沢山あって、衝撃も大きく、それを素直に表現していったが、今はある程度わかっていることが多く、ある意味慣れてしまっていたから、初めて観る観客の視点でどう新鮮さを出すか、苦労した。」
云う迄もなく、こういった原子力事業等は、特に流動的なものであり、知っているからそれでいい、ということは通用しない。「のむさん」こと野村昇史さんは、役者について、「うぬぼれはよくないね。」と話すが、それは観る側にも云えるはずだ。知っているからと言って、見下して評価しようとしたり、得意になったり、そういった傲慢な態度で居ては、新しい発見も見過ごしてしまう。阿部さんが新鮮さを維持しようと心、配っている先に、わたしたちはきっとまた新たに何か見つけられるかもしれない。
演出家、役者、スタッフ―。気心知れ合い、作品と仲間に対する強い尊重と、演劇に対する熱い想いが創り出している独特な雰囲気も見所の一つだ。
ぜひ多く、足を運ばれたい。
公開稽古では始まりのシーンの稽古を公開した。
◆高知公演
高知県立美術館 ホール
2008年9月20日(土)19:00開演
◆神奈川公演
川崎市アートセンター アルテリオ小劇場
2008年9月27日(土)・28日(日) 両日とも15:00開演
◆北海道公演
深川市文化交流ホール み・らい ホール
2008年10月4日(土)19:00開演
10月5日(日)15:00開演
◆福島公演
いわき芸術文化交流館アリオス 小劇場
2008年10月11日(土)15:00開演
他、上演に関する詳しい内容やスケジュールに関しての情報はこちらの
サイトで見ることが出来る。
川崎市アートセンターでは、初演時同様、気付き表現「epf」による写真展
「六ヶ所村エナジー」+「link − みんなのひかり −」も同時開催中。10月3日まで。
<参考>
川崎市アートセンター
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